ジエーン ペティグリューよりダージリンの現地情報

■ JANE PETTIGREW Profile

ジエーン=ペティグリュー:ジエーンさんは英国でティ・カウンシルのライターでもあり、フリーのテイ&フードライターで多くの英国フ一ドの本や紅茶の本の著者でもあります。

『TEA TIME』や最近の本では英国とフランスで出版された『TEA COMPANION』又、ロンドンの有名なウォルドルフホテルやメレディアンピヵデリーホテルのアフタヌーンティのティコーディネーターの仕事でも有名です。

NEW YORKの『TEA & COFFEE JOURNAL』のTEA WRITER としても活躍中!

■ 「高級なダージリンティ品質 グムチ(GOOMTEE)と ジュングパナ(JUNGPANA)と茶園について」

ダージリン
1999年はグムテ茶の特別な年です。1999年にこの有名な茶園は100年になります。この100年ずっとこの園は世界中でおいしい紅茶を売っています。

ダージリンは、インドの東北地方にある小さな町で、海抜6000メートルにあるこの町はとてもきれいで、紅茶で世界的に有名です。山々に囲まれているこの町の名前の意味は、インドロの雷電(らいでん)です。伝説によれば、この町はインドロというヒンズー教の神様の、雷電が落ちた所であると言われます。

チベット語では、「ダージ」の意味は「雷電」で、「リン」の意味は「所」であります。この町で作られた紅茶は、「茶のシャンパン」と言われています。紅茶の鑑定家達は、ここで作られた紅茶を鑑定し、より良い製品を求めて研究しています。ダージリンティには、味だけではなく香り、色も楽しむことができます。マスカット、ぶどう、干しぶどう等の香りがあり、とても興味深いものです。紅茶の専門家の意見では、ダージリンの気候と地形は、おいしい紅茶をつくるために最も適していると言われています。

涼しくて湿った気候、時々は雨、時々は晴れる天気、肥えた土、きれいな空気等は、おいしい紅茶をつくる為には、とても必要です。ダージリンティのこのような気候、地形があって世界に誇る、おいしいダージリンティが生まれます。

■ 季節ごとの紅茶

変わりやすい気候は、一年中同じ様な作物を収穫するには邪魔なものです。冬はとても寒くて乾燥した気候で、春は温かくて雨っぽい気候です。雨期は6月から9月まで毎日のように雨が降ります。ですから、一年中同じ特徴のある作物を収穫するのは、無理だそうです。その結果、年によっては紅茶の色と品質が、気候によって変化することがあります。

3月の始め頃に、太陽から降り注ぐ光が強くなり、土地が雨によって柔らかくなると、茶の新芽が出てきます。この新芽と若葉から、とても香りのよい、おいしい紅茶ができます。紅茶の愛好家達は、4月に摘み取った春取りの紅茶をたいへん好みます。

この春取りの紅茶は、値段が高く、世界中で賞賛されています。5月から有名な夏取りの紅茶がつくられます。これは、甘くて最もおいしい紅茶です。7月から9月の雨期取りの紅茶は、香りが強く、良い色をしています。

10月から11月にかけての秋取りの紅茶は、銅褐色でこの紅茶は、美味で輝きのある特徴を持っており、柔らかい香りがします。最近、86ケ所の茶畑、19000ヘクタールの土地では、10〜11百万キロの紅茶が毎年、できあがります。この86ケ所の茶畑は2つの大きな茶園グムテ(GOOMTEE)とジュングパナ(JUNGPANA)です。この2つの大きな茶園の紅茶は、カルカッタの紅茶の競り市場で一番高い値段で卸されます。

■ 滝、林と茶畑

マハナヂ川の滝
グムチ茶園のグムチは民族の名前で、ネパール語の"GHUMTI"という言葉から名付けられました。GUMITIの意味は「曲がる所」です。1899年にヘンリーモンゴメリー レノックスというイギリス人がこの茶園を設立しました。 これは1000〜2000メートル山の斜面にあり、高級茶をつくる茶畑です。気温は涼しくて、程よい降水量で霧と光がうまく組み合わされて高級茶をつくりやすい畑にしています。

マハナヂという川も、この茶園のまわりから流れ出ており、沢山の滝と林もあります。茶園も経営者の家も美しい自然に囲まれています。

この茶園は昔からあり、一つの歴史を持っています。イギリス人のレノックス氏の後は他のイギリス人が経営者になりました。その人の名は、G W O BRIWN です。しかし、このビリエン氏も第二次世界大戦の後、この茶園をネパール国王であるラナ国王に売りました。それから1950年にマハビル ポロシャドのいうインド人がこの茶園の経営者になりました。1950年から今日に至るまで、工場の製品とその品質はとても発展しました。

そんな中、100年前にレノックス氏が植えた茶の苗木は、今でもそのまま保存されています。それは伝統的な茶の味と品質を維持するためです。多くの茶の研究者は、多くの研究の結果くわしく茶畑の特徴を知ることができました。残っている土地には毎年新しい茶の苗木を植えます。このような繰り返しによりグムチ茶園の茶は、より美味しく香り高い紅茶に育ちました。

グムチ茶園の紅茶は、ダージリンの5つの主な茶園の中の一つになりました。この紅茶の特徴は、マスカットの香りとスムーズな味です。

ダージリンの茶摘み
今、この茶園の500エーカーの土地には10万本の茶の苗木があります。約2千人の労働者が茶摘みの作業をしています。1キロのおいしい紅茶をつくるためには、一人が一日中作業をしなければなりません。1本の茶の苗木から毎年わずか100グラムの紅茶しか作ることができません。茶摘みから紅茶に仕上げる行程を経て、つくられる貴重な紅茶でありますから、自ずと値段は高くなります。

グムチの工場は茶園の真ん中にあり、とても便利な所です。それは労働者によって摘まれた茶の葉は、すぐに工場に運ばれます。ですから、茶のデリケートな品質の低下を少なくすることができます。この工場では自然的に紅茶をつくります。温度、湿気、茶の乾燥の期間などの管理は機械的な正確さが必要ですが、ここでは人間の感性、経験を一番重用視しています。


経験がある労働者達は、自分たちの感性、経験を元に紅茶の品質を決めるので、本当に人間的な温かみをもつおいしい紅茶がつくられます。紅茶が製品としてできあがれば、10キロごとに包装されます。その前に最終的な味見をして製品として送り出されます。一般には10キロごとに包装されますが、125キロまでの包装も可能です。

しかし、製品全体の1.5%〜2%の紅茶は品質が低下してしまいます。茶園の経営者は、ダージリンの生活環境や社会福祉にも注意を払っています。土地の保存や自然破壊を防ぐことなどは茶園の主な仕事の一つです。また、茶園労働者の労働環境、生活環境にも目を配らせ、特に妊娠した女性の労働者には、仕事の上でも生活の上でも、無理のないように茶園が便宜を図ります。

■ ヒマラヤの小さな庭

摘んだ茶葉を工場へ
グムチ茶園のすぐそばにある小さな、ジュングパナ茶園も品質のよい紅茶をつくることができます。

南側にあるこの茶園はもともとは、イギリス人によって設立しました。約3千フィート海抜にある、この茶園はダージリンからそれほど離れていません。一部の少しのこの茶園の茶畑は45百フィート海抜の所にもあります。

昔話によれば、一人のイギリス人の猟師が一日召使のジョング バハドルと山に狩りに出かけた時、突然一頭のヒョウがこの二人を襲いかかりました。召使であるジョング バハドは、主人であるイギリス人を助けましたが、その分自分自身が重傷を負いました。それで、ジュング バハドルが水を求めたので、すぐ主人は彼を背中に背負い近くの小川に連れていきました。しかし、ジュング バハドルは水を口にした後、すぐに息をひきとってしまいました。そのときから、この茶園がある山は、ジュング パナと呼ばれています。

「ジュング」は主人を救ったこの召使の名前で、「パナ」はネパール語で水のことを言います。ですから、この茶園もジュングパナと呼ばれています。

この茶園の茶畑は、主要道路から離れていてとても入りにくい所にあります。谷を渡って入るこの茶畑は、大きな機械を持って入ることはとても不便をきたします。ですから、収穫された茶の葉は大きな箱に入れて人力で主要道路まで運び、そこからトラックに積んで紅茶工場に運びます。

この茶園の特別な紅茶は、中国のバラティーの多い茶の葉から作られます。標高のある山の斜面と、霧のある気候は香り高い紅茶を作るのにとても適しています。

このジュングパナ茶園の紅茶も紅茶鑑定達にほめたたえられています。グムチ茶園と同じように、ジュングパナ茶園の紅茶もカルカッタの競り市場で高い値段で卸されます。日本、ドイツ、イギリス、ヨーロッパ諸国から紅茶商売人が、これらの紅茶を求めて来ることもあります。高級の紅茶であるので値段は高くなりますが、1キロの紅茶の葉から400杯の紅茶を入れることができるので、本当のことを言えばそんなに高くはありません。

紅茶の愛好家達は誰でもグムチ茶園とジュングパナ茶園を口にすれば正確にどちらの茶園の紅茶であるか判断することができます。お湯に、茶の葉を入れて、3分から3分半おいていただけば、充分味はでます。できれば出し終えた葉を取り外しのできる紅茶専用ポットを使って紅茶の味を出しすぎないようにして頂ければ、より良いおいしい紅茶を飲むことができます。


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