TEA and COFFEE Trade Journal

■ 2000年7月号掲載記事 / パッケージは、紅茶業界の影のヒーローです

パッケージは、紅茶業界の影のヒーローです。茶園では、絵にかいたような土地に、美しい緑の低木を育てていますが、生産物の茶葉を売るにはティーパッケージに頼らなければならないのです。 栽培した茶葉が消費者のもとで飲まれるまで、何かしらの容器にはいっており、小売購買時広告法で、正味重量 、原産国、会社の所在地をパッケージに記載するよう定められています。実際、西洋諸国では、家庭用紅茶のパッケージには、ほとんどすべてに記載したラベルが貼ってあります。 小売用のお茶の中で一番人気は、紙製のパッケージです。他にも人気があるものが、あるにはありますが、ターゲットが絞られているのです。農業に従事する貧しい人達の間では、プラスチック容器が人気を集めており、上流階級では、真鍮や陶磁器、カエデやマホガニーといった硬材、微少な細工をした缶 が人気です。高級なパッケージは、紅茶貿易全体の地位を高めても、全世界の売上げのうち、たった1パーセントにしかなりません。

数え切れないほどの紙製の紅茶箱が、世界中の店の棚に並んでいます。こういった箱は、紅茶のブランドとスローガンを伝える第一の手段で、消費者の関心を引くことができます。他の方法なら、消費者に見向きもしてもらえません。競争の激しい中で企業は、さらに魅力的なパッケージをつくろうと、莫大な費用をかけています。大手紅茶会社では、グラフィックデザイナーと広告部門の専門家が、最も高い給料をもらっています。弁護士までパッケージにかかわっており、パッケージに使う絵、正しい商標の入れ方、著作権、原産地、正味重量 、容量、健康や無添加といった宣伝文句についてアドバイスしています。 顧客がパッケージを気に入ったら、そのブランドの価値は高まり、固定客がつきます。パッケージのイメージが、紅茶の売れ行きを左右するのです。見た目で、購買者(多くの場合、女性が家族のために購入していく)の中にひそむ記憶や感情を刺激します。色、外観、キャッチフレーズ、すべてあわさって固定客をつくっていくのです。

経営陣は、製品そのものや節税、人事、その他たくさんの仕事上の問題には明るくても、パッケージデザインについてはほとんど知識がありません。経営陣はたいてい男性で、総じて芸術的センスが欠けているのですが、その彼らがパッケージデザインの最終決定権をもっているのです。せっかくのいい紅茶も、さえない箱に入っていたら、利益は上げても予想したほど売れないでしょう。 パッケージの最終決定をする経営幹部は、購買者をひきつけるデザインを考える部門とは無縁の分野で実績を積み、現在の地位 をつかんでいます。だから自分達で最終決定しているのに、自社製品のパッケージの色や名前は何かと問われると、彼らは答えられないのです。市場調査が確実に示すように、顧客が物を選ぶ時は、パッケージがその製品にふさわしい色や色あいかといったことに、かなり左右されるのです。 青色がいい例でしょう。女性が購入する家庭用品は、青色のパッケージだと他より売れ行きがいいのです。紅茶業界の背後には、パッケージについて市場調査を行っている多くの消費財部門が控えています。もし青色とパッケージの関係に興味があれば、洗濯用具が置いてある売場を歩いてみるといいでしょう。 大企業の傘下に入っている紅茶会社ほど、パッケージとブランド名の恩恵をうけています。世界で一番有名な紅茶会社、リプトンはユニリーバ社の一部門です。そのユニリーバ社は家庭用品部門でトップの大企業です。ユニリーバ社は消費者の志向がかなりかわってきていることをうけて、新しい紅茶製品を売り出しました。それがリプトンアイスティーブレンドです。この箱は、上部と側面 の上部分がシアンブルーになっており、落ち着いた深みのある赤で広告がはいっています。正面 と横のメインカラーは明るい黄色が使われています。

黄色と赤色が、同じ棚にあるたくさんの紅茶より目立っていて、買い物客の目を引いています。青色はやや威圧感を感じる色のひとつで、よくない印象を与えることもあります。しかしそれと同時に'ベイビーブルー(淡い青)’や’スカイブルー(空色)や’ロビンズエッグブルー(薄緑がかった青)'は安全で落ち着くといった、好意的な感情を表します。こういった青には、親しみやすく、安全で、控えめで魅力的といった感じがあり、おだやかな家庭を連想させます。

ユニリーバ社は、自社ブランドの名前やスローガンや工夫したパッケージを保護するため、商標と著作権をとっています。アイスティーブレンド紅茶のパッケージには、登録商標の(r)マークが6つ、著作権の(c)マークが1つついています。ブランド名を一般 の人々に覚えてもらおうと、50個入りティーバックの箱には、リプトンという文字がいろんな大きさで、21個も、巧みに印刷してあります。この21個のブランド名攻撃は、パッケージの現代的な利用法で、さりげなくブランド価値を確立するのです。

紙製の箱が、紅茶の容器以上の価値があり、重要な広告として2つの機能をもたらしていることをリプトン社はわかっています。パッケージのラベルは、消費者にシグナルを送るだけではなく、ライバル会社にもシグナルを送っているのです。ブランド名やスローガン、ロゴ、デザインや表現が、法的に守られていることを宣言し、他の会社が不正使用しないように警告を送っています。

世界的に複雑さが増しています。ユニリーバ社は、リプトンの名を使う、世界中のたくさんの会社を統轄しています。中にはヒンドスタンリーバ社といった、そこだけでもかなり規模の大きい、多角経営をおこなっている会社が、リプトンブランドのパッケージで紅茶を売っています。

中間層でリプトン紅茶を買う人は、アジア大陸でもアメリカ大陸でも、同じ赤と黄色のパッケージを目にします。多国籍企業は、国境を越えて同じ色のパッケージを市場に出すことで、利益を保ち、世界的なブランド名をさらに確固たるものにします。通 貨の色(肌の色)は世界の地域によってばらばらでも、世界的企業なら、誰にも、政府さえも成し遂げられない外観の統一ができるのです。

昔から使われているスローガンには、国際的な訴えを強要する傾向があります。リプトンの”100%ナチュラル、100%本物”といったもので、自然や健康といったものに対するこだわりを表しています。また女性は国際的に紅茶市場の核となっています。アイスティーブレンドの背ラベルには、メアリールーレットン(女子体操選手)が描かれていて、「私はあなたと同じ、忙しいワーキングマザー。でも家族のためにアイスティーを入れて楽しんでいるわ」とコメントが載っています。そして最後の2行が、このパッケージラベルの傑作です。「どこでも本物の紅茶を入れられる全く新しい方法です。紅茶は体にいいといった、すばらしいニュースもあります」メアリールーは小柄で元気がよく、万人受けするイメージを代表しています。また健康的で魅力的であり、魅惑的でも従順でもありません。

印象的な言葉をうまく使えば、消費者に製品を覚えてもらえます。テイラーズティーロンドン社は、2倍の香りがする紅茶の名前を”紅茶以上のフルーツティー”と大文字でおおきく印刷しています。テイラーズ社は、英国資本を後盾に、運搬上の関係でスリランカを拠点としています。12種類の主なラインナップを北アメリカを除く世界中で販売しており、アメリカ市場にも参入する予定です。テイラーズのパッケージには、4カ国語で書かれたものもあり、大量 生産で原価をおさえています。こういったパッケージは、その4カ国語が使われている地域ならどこでも、そのパッケージで売れるのです。20個入りのパッケージには、「テイラーズティー・・それは人生の一部」「スリランカでパックしたピュアセイロンティー」といったスローガンが書かれています。

スリランカの紅茶会社の多くは、かつて大口専門の卸し売り業者でした。しかし、現在は幅広い小売用ブランドを市場にだしています。それは、会社がパッケージを卸す人であったり製造業者であったりデザイナーであったりするということです。マスケリアプランテーショングループは、スリランカに20の茶園を経営していますが、小売業社へと確実に移行しています。そこのプラマスというブランドは、英国スタイルの品揃えで、八角形の箱に入っており、特別 の茶園からそれぞれのブランドを作り、一日のいつに飲むのがオススメかといったブランド名がついています。たとえば「イングリッシュブレックファースト」「イングリッシュサンダウン」「イングリッシュサパー」といった具合です。日常使いの紅茶の「ゴールド」は、ブランド名と同じゴールドのパッケージです。

おそらく世界で一番有名な高級ブランド、トワイニング社は、「トワイニングティーレジスター」を入れるパッケージが最近大当たりで、第2版を印刷しました。トワイニング社は現在ブリタ浄水器と共同広告を行っており、そのティーレジスターを高級浄水器メーカーのパッケージの中へ入れることで、水にうるさい人と紅茶にうるさい人を直接結びつけようというわけなのです。ブリタのスローガンは「水道水をおいしく」です。トワイニング社とブリタ社の共同広告は、以前紅茶にまったく興味のなかった高い教育をうけた金持ち層の心を捉えました。普段使われている家庭用品や水差しのパッケージにも同じことをして、自慢の紅茶を宣伝することができました。ティーレジスターをデザインしたのは、キム・バーリー・カサーで、彼はトワイニング社の関連会社であるグロスベナーマーケティング社で働いており、非常に才能があり努力家です。 タータティー社は、その豊富な財力と品質管理で知られており、企業内の戦略企業計画部門の幹部、クルビア・メータ氏と長期のトレンドに目を光らせています。メータ氏は多様な才能で、輸出の国際化による競争の激化の中、タータ社の地位 を築き上げました。彼は、農業科学を研究したあと、アッサムで現地訓練をうけ、開発銀行に入行した後、タータ社の研究開発マネージャーとなりました。現在は戦略企業関係の仕事を取り仕切っています。タータ社の活動を取り仕切るのは、アシュラフ氏で、商品作物の種を援助する、影響力のある南インド合同農場経営者協会の会長も務めています。

グローバル化は、紅茶業界全体にいやおうなくせまってきています。紅茶の評判や経済性は、輸出額と条件の厳しい外貨で決まります。新しい時代の到来で、国際的に事業をすすめている会社の一部である紅茶会社は、有利なスタートを切っています。ヒンドスタンリーバ社(HLL)のスローガンは、「生産から製品までの戦略の統一」で、国際化の準備が整っていることの現われです。姉妹会社のブレンドである、サートーマスリプトンダージリンより高品質のグリーンラベルのダージリンリーフで、確立していた高級品の輸出市場を、即座に拡大できます。HLL社は市場拡大を計画しており、輸送手段が乏しい田舎の方での売上げをのばそうと、新鮮さを保てる新しいパッケージ技術を導入しています。 HLL社は、紅茶をブレンドしパッケージを行う、インド最大の会社です。インドは最大の紅茶市場であり、最大の民主主義国でもあります。HLL社が最近創り出したブランド「ニューリプトン」は、最新のパッケージ技術を駆使しています。コーポレートコミュニケーション部門のゼネラルマネージャー、イワン・カーン氏はメディアを使ってブランド名を知ってもらい、紅茶は上品すぎて古臭い飲みものだと考えている何百人ものアジアの若者に、紅茶を見直してもらおうといろいろ策を練っています。 重要なターゲットの若年層での、長年の競争相手は、ソフトドリンク類だとHLL社マーケティングマネージャー、ヴァンカティシュ氏は考えています。取締役のダディエス氏は、経済成長で消費者に購買意欲が向上し、紅茶の売上げが伸びることを期待しています。取締役兼HLL地域副支配人サンジェイ・コスラ氏は、国内株式の将来の利益を期待しています。

次に何が流行するかなんて、考えてもわかりません。ただ、ひとつの要因として、長く続いているものがあります。それはパッケージにブランド名を入れることで、その影響は絶大です。その世界で一番有名なブランドとして、コカコーラ社があります。紅茶は他の飲み物と比べて、ブランド名を目立たせて流行らせようといった方法には、あまり積極的ではありません。しかしブランドのイメージアップは、会社にとって価値あることです。もし、ある会社が他の会社の登録しているスローガンやブランド名を勝手に使用してしまったら、知的所有権の侵害だと言われます。法的には紅茶の荷を盗むのと同じことなのです。 紅茶貿易での知的所有権は、むしろ他の業界よりもよく討議されており、最高政府機関によって、積極的に知的所有権を保護しようという動きがあります。アメリカにあるインド大使館のアジャイ・マルコトラ大使は時間を割き、とりわけ自国の紅茶輸出に対して、法的保護を促進しようしています。グローバル化した社会経済システムの中で、紅茶産業界のリーダーは、海外に駐在する自国の政府機関と連携を取り、自社ブランド名と原産地の価値の両方を保護していく必要があります。

パッケージとスローガンで、ブランド名が広く知れわたります。またその国のアイデンテティも売り込めます。「フォルモサ」は台湾産だと見ればわかるし、「セイロン」はスリランカ産、「ダージリン」「アッサム」「ニルギリ」という字を見ればインド産だとわかります。何百万人という消費者は、紅茶のパッケージで普段目にしている場所へ行ったことがなくても、その場所に対していい印象をもっています。世界中で紅茶を販売する会社は、政府の紅茶関連局に頼んで、世界市場で戦っていくのにかかせない、ブランド名やイメージやスローガンを、法的に保護してもらうよう頼む権利があります。

本文は『TEA&COFFEE TRAE JOURNAL/vol.174/No.7 2000年7月号』より・・・

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