この2000万本のとげのある植物アルガンツリーは、モロッコ中西部サフィからサハラ砂漠周辺の範囲だけで自生する木です。しかしこの古い木は、今や絶滅寸前。農水省によると、このままでは2007年までにアルガンツリーの35%が枯れてなくなってしまう危険があるとしています。 砂漠化の進行を防ぐ働きもあるアルガンツリーは、非常に貴重な資源でもあります。この木は捨てるところがありません。木は炭を作るのに利用できるし、葉や木の実はヤギの餌。そして木の実からとれるオイルは、薬として、台所の調味料として非常に多くの用途を持つ万能オイルです。
その価値に気づいて、木を守るためCharouf-Chafchaouni教授は、まず、なんとか地元の人達が、アルガンツリーを保存することに興味を持ってもらおうとしました。そして1996年、アルガンオイルを製造する女性だけの協同組合が発足しました。しかし当初、男性はこの団体を快く思わず、理解してもらうには非常な努力が必要でした。でも、この組合の目的が女性を解放することではなく、さらに利益が自分の家にも入ることに気づくと、夫自ら自分の妻に仕事をまわしてほしいと頼みにくるようになりました。それ以来、他にも女性だけの協同組合がTidzi と Mestiに2ヵ所作られ、さらにTiout とAit Bahaにも2ヵ所、今年の終わりまでにできる予定です。どの協同組合も最初は従業員も少なく小規模でしたが、注文が急激に増加したため、今では200人の女性がこの組合の仕事をしてお金を儲けています。この仕事で得られる収入は、月に500から1,000ディルハム。月によって収入は不安定ですが、それでも子ども達を学校へ行かせたり必要な学用品を買う分はまかなえます。女性としての尊厳も得られるのです。
組合では教育的な面でもサポートしており、読むことを教える週間単位のコースや、アルガンツリー経営についてのミーティング、さらにコンピュータやマルチメディア、e-コマースといった勉強会まで開催しています。その組合の女性達は、各自で年に10本ずつアルガンツリーを植える活動をしています。
Pr.Zoubidaがもたらしたこの功績を本人は、モロッコの現状を見ようと、勇気をもって自分の研究室を去った結果がこのようになり、非常にうれしいと控えめに話しています。
(エアー モロッコの 機内誌 10月号 2002年 より)
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