■ 第二十四回 ボナコッシ家オリーブオイルの旅
| トスカーナの丘陵地帯 |
2005年5月の終わりに久しぶりにボナコッシ家を訪ねてきました。
ここ数年予約だけでなくなってしまう、オリーブオイルの出荷数を多くしていただくのが最大の目的です。いつも発注のやり取りだけで現地に行くのは久しぶりです。訪れたトスカーナは以前とまったく変わらず雄大な丘陵地で特に5月は気候のよいシーズンですっかり仕事を忘れそうなぐらいのんびりとしてきました。一緒に同行してくれた友人と『人間にもこんなによい環境は、植物にもよい環境、とおいしいものができるのを身をもって知ることができるね!と茶畑に行った時と同じことを思わず言ってしまいました!産地に行くのは本当に納得がいく商品を確認するためです。
というわけで今回はまたお茶の旅の番外編でオリーブオイルの旅です。
| ボナッコッシ家 |
ボナッコッシ家のHPによると、
『この北トスカーナのカペッツァーナエステートでは、数世紀にわたりエキストラ バージンオリーブオイルを製造して来たそうです。紀元前840年の契約書には、すでにカペッツァーナのワインとオリーブオイル についての記述が出てきます。このエステートでのオリーブ栽培はさら に古く、エトルリア文明や古代ローマ時代までさかのぼります。
北トスカーナがオリーブ栽培 の限界になるのです。この地方のオリーブの木は、小さくて、幹は霜の傷でくぼんでいます。しかし木が小さいおかげで、果実を手摘みで収穫できます。また、他の地方と気候が異なるため、北トスカーナのオリーブオイルは、際立って特徴のある味わいを持っています。』
とあります。この建物の中にワインの製造所やオイルの製造所があります。工場でなくてお屋敷ですが!!
| オリーブオイルの石臼 |
これは、オリーブの実を石臼で挽きペーストにしていた臼です。
以前私が訪れた時は使用されていたのですが、3年前からもっと品質のよいオイルができる機械に変えたそうです。
それで建物のまえに記念に飾られていました。
| 選別・洗浄機 |
今はこんな機械になっていて、まず収穫されたオリーブの実を水が上からシャワーのように出てきて綺麗にします。
小さな機械ですが近代化が進んでいます。
このあとパースと上につぶす機械があります。
オリーブのオイルは他のオイルと違い種だけで作りません。全部の実を絞るので果汁がすべて絞られます。だから場所によって大変、味、香り、色が異なります。
| フィリッポさん |
『この地方のオリーブの木から収穫できる量は、南の温暖な地方に比べて、10 分の1ほどしかありません。
しかし、脂肪分が少なく、フルーティで香りがよく、味も安定してバランスがいいのです。
カペッツァーナでは、エキストラバージンオリーブオイルを昔から製造して いますが近年、製造技術を改善し、さらにフルーティで酸味の少なく洗練された味わいのオリーブオイルが作れるようになりました。』
とHPに書かれていますが、この技術改革をしているのが右の写真のフィリッポさんです。
彼は農業作物学者で大変力の入った説明をしてくれました。
| 遠心分離機 |
それによると、昔ながらの石臼を用いた製法では、オリーブをつぶす際に摩擦熱があるので3年前に機械を新しく導入したそうです。
絞った後すぐに、遠心分離機を使いますが以前の機械に比べて大変速い速度で回転する機械に変えたため、よりフルーティになったそうです。
昔は石臼のあと圧搾していましたが、遠心分離機の方が汚染源となる繊維隔膜を取り除け、やさしくオイルを抽出し、非常に良質のオリーブオイルを製造できます。
さらに最新の機械を導入して、収穫から24時間以内でオイルに加工できるようになり、果実をストックする必要がなくなりました。これもフレッシュな香りの要因です!
| オリーブオイルを漉すメッシュ |
一番驚いたのはフイルターにかけずこのメッシュで通すだけだそうです。
それで日本到着した段階で透明感がなくにごった状態でボトルに入っているのだと改めて確認しました。
この方がおいしくてバランスがとれたおいしいオイルができると説明してくれました。
| 1871年から使われているテラコッタのオイルの壷 |
これはこの家で一番古いテラコッタのオイルの壷です。
いろいろな形があり、またいろいろな番号が書かれています。とっても不思議で彼に質問しました。
今回はローマから同行してくれた通訳のミカさんが一緒なので難しい質問OKで助かりました。私の語学力では、理解力がちょっと怪しいので!
| オイル壷専用の部屋 |
これがその壷が並んでいる部屋です。年間一定の温度で寝かせておくのにいい部屋です。
ここでは昔ながらの方法でいったん出来上がったオイルを各農家のロットごとにこの中に入れて1週間ほど寝かせます。
それで別々の番号がついているわけです。
このオリーブ園では農家の方がボナコッシ家から木を管理するのを任されていて手入れ、収穫は農家がするそうです。
敷地の中に3種類の違う品種のオリーブが植わっていてそれぞれ製造されます。
| 貯蔵タンク |
1週間ほど寝かせたオイルをひとつづつ分析にかけます。品質が悪いとブレンドには使いません。
3種類の品種のオリーブのオイルはこのステンレスの大きな機械のなかに良質のもののみいれてブレンドされます。
それからボトリングが始まります。このオイルは出来上がったオイルの量を農家が50%、ボナコッシ家が50%分けるそうです。
ということで収穫の少ないときや、品質がよくないときは極端に製品が少なくなります。
でも良質のオイルがたくさんできると両方に大変うれしいことです。
というわけでこここのオイルがおいしいのは大きな会社のサラリーマンが作っているオイルと違い大変熱心に気つけて生産されているからです。良質、高収穫だとお互いにいいわけですから!
| ボトルが並ぶ |
初めて買ってくださったかたが驚かれるのはビンがオイル用でなくワインのボトルでコルク栓で販売していることです。
この理由は、ここは有名なワインのエステートです。HPから参考までに!
『カペッツァーナ・ワインカペッツァーナエステートは、フィレンツェの近く、プラトーのカルミグナーノ地区に古くからある農園です。
この地区で発見されたエトルリア人の遺跡からワインピッチャーが発掘されており、ローマ時代以前の今から3000年ほど前には、ワインのぶどうを栽培していたことが分かっています。』
ですからオイル生産専用の会社ではありません。
敷地の中に昔から自分たちが使うために作られていてそれが販売されています。
自家需要なので味に敏感に厳しいわけです。
それと、一般的なオイルの会社は500ccのボトルが多いのですが、このボナコッシ家のオイルは750ccとたくさん入るボトルです。
ですから使ってくださった方からは、たくさんは入って大変お得と評判です。
| オリーブの木 |
私がこの伯爵家をお訪問した5月末、オリーブの木は、まだかわいい花が咲いていました。
いつか11月の実をとる収穫を見に行きたいと話したところ、自分で体験したらといっていただきました。
皆さん収穫に出かけませんか? おいしいオイル作り体験ツアーなど組んでみたいものです!
| 伯爵家の面々 |
この家のHPに、
『この屋敷は、カントゥーチ伯爵と結婚したメディチ家の親族のために建てられたものです。その屋敷が、遺贈されていきながら、現在ワイン園を家族経営しているボナコッシ家に渡りました。ボナコッシ家のフィリッポは作物学者でもあり、会計を担当しています。ベアトリスは、マーケティングや外国との取引と担当し、ベネッタは、イタリア国内の渉外および農園とワイン貯蔵室のガイドツアーを担当しています。リサとウーゴは、今でも農園の作業に従事しています。リサは、プロ向けのイタリアワインと地中海料理のセミナーも受け持っています』。
と、あります。
このウーゴというのが一番写真の左の伯爵で大変エレガントでお話が素敵な紳士です。いまも現役で農園を手入れして回っていられます。
その横に長男の方、この方はイタリアの歴史を教えていられる大学教授で昨年は客員教授として東大でお話され6ヶ月日本に来て滞在していられたそうです。
一番右の若い男性は彼の息子でアーチストとして日本で絵の個展を開いたりと活躍されています。
残念ながらHPには製品に携わっている家族の紹介だけになっています。
大変素敵な伯爵家のファミリーです。今回は3時間にもわたる昼食会を私たちのために開いてくださり大きなダイニングで昔、宮本 美智子さんの本のタイトル『トスカーナの優雅な食卓』のような体験してきました。
ぜひ皆さんにも召し上がっていただきたいですね!
| トスカーナの景色 |
と、長い説明になってしまいましたが、この初夏のトスカーナの景色とともに私のオリーブオイルの訪問の旅は終わります。
ここからフィレンツェの町に戻り、ローマにいったことは後日またお知らせいたします。
オイルがおいしい理由、少しわかっていただければ嬉しいのですが!
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